はじめに
ソフトウェア現場改善エバンジェリスト&デザインDXエバンジェリストの山路です。
第1回「なぜ、メタモデルなのか?」では、デジタルペーパーを用いた文書記述に内在する問題構造をご説明しました。 「何を」を定めるのに「どうやって」という特定の見た目を使って定義していることに気づき、ここに問題の本質があることをお伝えしました。 第2回では、エンジアリングプロセス(本ブログでは、「対象製品を設計する技術的なプロセス」の意味で使用する)の共通化と上記の気づきの関係性を論ずることで、共通化を進める1つの方法論をご紹介します。
なぜ、同じ内容を定義するのに見た目が異なるのか
第1回で述べた気づきが示唆することは、「同じ内容を定義するのに、異なる見た目を使ってしまう」ということです。
人によって、チームによって、組織文化によって、慣習によって、あるいは、その時々の関心事によって、別々の見た目を使ってしまうのです。
そして、この現象の大半は、エンジニアの頑張りによって引き起こされています。
例えば、設 計した内容を上手く伝えたいというエンジニアの思いにより、知恵を出して文書記述を工夫することがあると思います。
各エンジニアのそれぞれの工夫が見た目のバリエーションを増やします。
また、文書記述の標準化や共通化などのプロセス改善を行うこともよくあることでしょう。
活動を推進するチームの関心事や価値観に合わせた見た目を採用するので、他製品や他の組織とは異なる記述形式となりやすいのです。
異なる見た目が、共通化を阻む
エンジニアリングプロセスのバリエーションが増えてくると、全社レベルや大きな組織レベルで「共通化したい」、「共通化すべき」と、上層部や改善部門から要望されることがあります。
良いプロセスは組織で共有したい、共通化することで開発の効率や品質を向上させたい、あるいは、配置転換をしやすくしたい、等々の理由によりプロセスの共通化が求められます。
よくある話で、皆さんも一度や二度のご経験があるのではないでしょうか。
そこで、多くの組織では、プロセスの共通化を推し進めるために、各チームの代表が集まってワーキング活動が立ち上がります。プロセス共通化ワーキングです。
しかしながら、ワーキング活動の進みが遅い、時には、頓挫して自然消滅する、なんて状況を度々見かけます。それは、なぜでしょうか?
“なぜ”を考えるヒントとして、前述した以下の気 づきを思い出してください。
- __「何を設計するか」を「どのように設計するか」という特定の見た目で定義する __
- __同じ内容を定義するのに、異なる見た目を使ってしまう __
このため、共通化の議論も、それぞれのプロセスの特定の見た目を比較して行うことになります。 つまり、見た目の影響を受けた議論になってしまうのです。 見た目の違いから、「共通化が難しい」という結論になることもあるでしょう。 また、「何を」を議論しているつもりが、「どのように」の議論にすり替わることもあるでしょう。

人は、見た目に惑わされやすいのです。 もしかしたら、自分のプロセスを変えたくないとか、共通化ワーキングのマウントをとりたいとか、そのような思いが無意識に働いているのかもしれません。 「見た目に影響される」という方法が、ワーキング活動を進みにくくさせている1つの要因になっているのではないでしょうか。
メタモデルを使って解決に導く
Next Designでは、「何を設計するか」をメタモデル言語で定義します。 見た目と分離する方式なので、見た目の影響を最小限に抑えることが可能です。 そこで、共通化を進めるには、以下のStepを踏む方法が良さそうです。

要するに、各チームが使っているエンジニアリングプロセスをNext Design上に搭載し、その後、メタモデルをもとに共通化を検討する方式です。 見た目を分離し、「何を設計するか」をメタモデルにより整理します。ここが重要なポイントです。 当初はメタモデルに慣れていないので少し戸惑うかもしれませんが、「何を設計するか」をエンジニアが自ら問うことで、対象製品の設計の理解が深まっていくはずです。 その後で、メタモデルをベースに共通化の検討を行います。 メタモデルという共通言語で検討することで、「何を設計するか」を概念的に捉えられることが期待できます。 その結果、共通な点が自然に見つかり、活動が進みやすくなるのではないでしょうか。
まとめ
このコラムでは、エンジニアリングプロセスの共通化活動を阻む要因をお伝えしました。
【阻む要因】
- 「何を」を異なる見た目で定義している
- 異なる見た目に議論が影響を受けてしまう
この要因は、デジタルペーパーが抱える問題構造が引き起こしてしまう現象です。
この問題に対し、メタモデルを用いた解決方法をご紹介しました。 「何を設計するか」をメタモデルで定義することで、見た目の影響を受けにくい検討ができそうです。 また、エンジニアの概念化能力の向上にも効果がありそうです。 プロセスの共通化を着実に進める方法としても、Next Designを使ってみてはいかがでしょうか。